Resnick(1994)『非集中システム』
非集中システム
Resnick(1994)『非集中システム』読了。
— Kosuke Sato (@cosine_135) April 1, 2021
蟻のコロニーや車の渋滞のように、統制者のいない、単純なエージェントの相互作用によって複雑な振る舞いが生まれてくる創発現象についての入門書。当時の熱意が伝わってくる。出てくるプログラムがLogoで書かれているのが味わい深い。
意外とこの辺って重要で、ある心理傾向が発見されたときに、それが集団の性質にそのまま表れるってナイーブに考えがちだけど、必ずしもそうとは限らないんだよね。そういった心理傾向が人々の相互作用の結果マクロには打ち消されるかもしれないし、まったく予測もしない結末をもたらすかもしれない。
— Kosuke Sato (@cosine_135) April 1, 2021
全然知らなかったが著者のMitchel Resnickってプログラム言語の「Scratch」を設計した人なんだね。https://t.co/44aXPzpo1k
— Kosuke Sato (@cosine_135) April 3, 2021
Camazine et al.(2001)『生物にとって自己組織化とは何か』
生物にとって自己組織化とは何か
Camazine et al.(2001)『生物にとって自己組織化とは何か』がすごく面白い。局所的な相互作用からいかに大局的な構造が生まれてくるか。微分方程式・モンテカルロシミュレーション・セルオートマトンといった道具立てで自然界の豊富な事例に挑む。惜しむらくは高騰していて手に入りづらいこと。
— Kosuke Sato (@cosine_135) April 27, 2021
いま読んでて特に面白いのが食物源の探索におけるミツバチとアリの動員システムの違いで、ミツバチは常に最適な餌場を見つけ出せる(これは有名)が、アリの動員システムではそうではないこと。アリ型のシステムは何がうれしいのかがもう少し深く知りたいな。
— Kosuke Sato (@cosine_135) April 27, 2021
ちなみにさっきの本は近くの図書館で借りてきました。図書館の存在は偉大。
— Kosuke Sato (@cosine_135) April 27, 2021
個々のシロアリが全体像を頭に持っていなくても局所的なふるまいだけで巨大な構造物(アリ塚)を作り上げられるのは、建設途中の状態そのものにも個体が反応して振る舞いが変わっていくから。創発された構造自体が個体に対する新たな刺激となることを「スティグマジー(stigmergy)」というらしい。
— Kosuke Sato (@cosine_135) April 27, 2021
Gancarz(1996)『Unixという考え方』
Unixという考え方
そういえば連休中にGancarz『Unixという考え方』読んだ。「一つのことをうまくやる」いわゆるUNIX哲学について書かれた本。3.2節「人間による三つのシステム」、5章「これこそ梃子の効果!」、6章「対話的プログラムの危険性」など今読んでも十分に価値がある。
— Kosuke Sato (@cosine_135) May 6, 2021
年号入れてなかった。Gancarz(1996)。
— Kosuke Sato (@cosine_135) May 6, 2021
一方で、Webシステムみたいなものを設計する際にどれくらいこれらの哲学が役立てられるのかということと、今になってアップデートされるべき事項とかあるのかが知りたいところではある。
— Kosuke Sato (@cosine_135) May 6, 2021
独自技術症候群はソフトウェア開発だけでなく研究の文脈でもよくあるよなーとうなずくばかり。
— Kosuke Sato (@cosine_135) May 6, 2021
設計思想の比較が面白い。"Atariのアプローチからは一般人にピストルなど持たせたら自分の足を撃ち抜くかもしれないという考えが読み取れる。これと対照的に、UNIXシステムでは、初心者にピストルどころか突撃銃を押しつけ、20発の弾を込めた上で、銃口を足に向けさせてやる"。
— Kosuke Sato (@cosine_135) May 6, 2021
Johnson(2002)『創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク』
創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク
スティーブン・ジョンソン『創発―蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク』を入手したので読み始めた。分散システム、アリ、都市、最近興味持っているものが勢揃いで楽しい。
— Kosuke Sato (@cosine_135) May 7, 2021
法のネットワークを巨大なアリの巣として見ると、それぞれの法の専門家が局所的な情報をもとにベストな改築をしていて、全体としては一見混沌だけど実はある種の最適性を満たしているということはあるかもしれない。中央統制者によるコードの管理という考えとはまったく相容れないわけだけど。
— Kosuke Sato (@cosine_135) May 7, 2021
もちろん、そんなことはなくてやっぱりダメでグダグダなシステムでしたという可能性はありえるわけだけど、それは調べてみないとわからない。こういうものの機能性というものを測る指標は何かあるのかな。
— Kosuke Sato (@cosine_135) May 7, 2021
創発というのはたぶん20世紀末の社会心理学で共有されていたひとつの重要なパラダイムだったんだろうけど、関心が次世代に特に引き継がれるわけでもなくそのまま立ち消えてしまった感がある。
— Kosuke Sato (@cosine_135) May 7, 2021